神経を取った歯の根っこの先に膿ができたら…?──根尖性歯周炎
「数年前に神経を取った歯が、最近また違和感がある」 これは、歯科の現場では珍しくない相談内容です。
ここで大事なのは、 神経を取った歯に起きている問題の多くは、虫歯だけではなく、歯の根の先の感染=根尖性歯周炎であるという点です。
しかも厄介なのが、神経がないため症状がはっきり出にくいこと。
定期検診や通常のレントゲンでは分からず、CTを撮って初めて発見されるケースもあります。
では、神経のない歯に虫歯が再発してしまったら、どうするのか?
実は、選択肢は大きく分けて3つあります。
■選択肢①:根管治療(再治療)
まず検討されるのが、「再根管治療(再根治)」です。
これは、歯の根の先に膿や感染(根尖性歯周炎)がある場合に行う治療であり、 単なる虫歯の治療とは別のものです。
過去の根管充填材をすべて除去し、感染源を取り除いたうえで、再度根の先までしっかり消毒・封鎖します。
ただしこの治療は、非常に繊細で難易度が高いという一面もあります。
特に、
- すでに2回以上再根治をしている歯
- 根の形が複雑な歯
- 土台や被せ物の除去が困難な歯
こうしたケースでは、再根治をしても治らない可能性が高く、抜歯を治療の軸として考えることも多いのが現実です。

■選択肢②:抜歯
「もう残しておくことが逆にリスクになる」
そう判断された場合には、抜歯が選ばれます。
たとえば、
- 歯の根が割れている(歯根破折)
- 中が感染だらけで清掃が困難
- 周囲の骨が大きく溶けている
- 何度も再発している
こうした状態のときは、無理に歯を残すことがかえって悪化を招くため、
**周囲の健康を守るための“前向きな抜歯”**という選択肢になります。
ここで大事なのが、抜歯して終わりではないということです。
歯科治療において、「歯を抜いたら終わり」ということは原則ありません。
抜いた後にどうするかを考えないと、かみ合わせ全体が崩れる(咬合の崩壊)リスクが高まるため、
その後の治療計画も含めてしっかり検討する必要があります。

■選択肢③:経過観察(様子を見る)
症状が出ておらず、画像診断でも進行が明確でない場合には、
「経過観察」という選択もあります。
これは決して“放置”ではなく、治療方針の一つです。
定期的にチェックを行い、変化があればすぐ対応できるように備えていく──
そんな慎重な見守りを意味します。
ただし、「神経を取った歯の根の周囲に膿がある」などの所見がある場合、
今は症状がなくても、顔の骨がすでに溶け始めていることもあります。
そうした状態での“様子見”は、悪化のリスクが高いため、
よほどの事情がない限りは治療を検討するのが望ましいでしょう。
■どの選択肢を取るかは、歯の状態次第
ここまで3つの選択肢をご紹介しましたが、
実際には「どの治療を軸に進めるか」は歯の状態によって大きく異なります。
- 初めての再発で、構造的な問題が少ない場合 → 再治療が第一選択に
- すでに再治療済みで予後が悪い → 抜歯が軸に
- 自覚症状がなく、CTでも大きな問題が見つからない → 経過観察も選択肢に
つまり、「3つの選択肢はあるが、どれでも自由に選べる」というわけではなく、
それぞれの歯に合った“現実的な選択肢”が限られてくるのが実際です。
■まとめ:違和感が出たときこそ、受診を
「なんかおかしいな」
「前に治療した歯が違和感ある」
そう感じたときこそ、“選べる幅があるうちに”歯科を受診することが重要です。
再治療で残せる歯も、時間が経てば抜歯しか選べなくなるかもしれません。
症状が出たり出なかったりするのも、免疫や体調の影響が大きく、
「いつ爆発するかわからない爆弾を抱えているような状態」と言っても過言ではありません。
早期発見・早期対応で、少しでも自分の歯を守っていきましょう。