歯ぐきが腫れてるだけ、だと思ってない?──静かに歯を失う「歯周病」という病気の正体
「なんか歯ぐきが腫れてるけど、まあ痛くないし様子見で…」
こんなふうに放置されがちなのが、「歯周病(ししゅうびょう)」という病気です。
でも、実は日本人が歯を失う原因の第1位がこの歯周病。
しかも、40代以上の約8割がかかっているとも言われる、非常に身近でこわい病気なのです。
そしてさらにやっかいなのが、かなり進行するまでほとんど自覚症状が出ないということ。
今回は「歯ぐきの腫れ」を甘く見てはいけない理由を、わかりやすくお話しします。
■歯周病とは?──歯ぐきではなく、骨が壊されていく病気
歯周病は「歯ぐきの病気」と思われがちですが、実際には歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしていく病気です。
きっかけは、歯の周りにたまったプラーク(細菌のかたまり)。
この細菌によって炎症が起こり、
- 歯ぐきが赤く腫れる
- 出血しやすくなる
- 歯ぐきが下がる
- 歯と歯の間にすき間ができる
- 口臭が強くなる
…といった変化が徐々に現れます。
しかし、それでも痛みがほとんどないまま進行してしまうのが、歯周病のこわいところです。
■最終的には「歯がグラグラして抜ける」まで進行
歯周病が進行すると、歯を支えている骨がどんどん溶かされていきます。
骨の支えを失った歯は、ある日突然、グラグラと動き出し、最終的には抜歯が必要になってしまうのです。
しかも、神経を取った歯などは痛みのサインが出にくく、気づいたときには「もう残せません」となるケースも珍しくありません。
「虫歯は痛いから気づけるけど、歯周病は気づけない」
これが、この病気の最もやっかいな点です。
■歯周病のこわさは“お口の中だけ”じゃない
最近の研究では、歯周病が全身の健康とも深く関わっていることがわかってきています。
たとえば:
- 心筋梗塞・脳梗塞との関連
- 糖尿病の悪化
- 誤嚥性肺炎のリスク
- 妊娠中の早産や低体重児出産のリスク
- 認知症との関連可能性も指摘
つまり、「歯ぐきの病気」では済まされない病気なのです。
■でも、早く見つけてケアすれば止められる
ここまで聞くと怖く感じるかもしれませんが、実は朗報もあります。
歯周病は、初期〜中等度であれば進行を止めることが可能な病気です。
重度にならないうちに見つけて、正しいケアを続ければ、抜歯を防ぐこともできるのです。
そのために必要なのが、
- 定期的な歯周病検査(歯周ポケットの測定など)
- プロによるクリーニング(歯石除去)
- 歯みがきの見直しと習慣改善
- 食生活や喫煙習慣の見直し
なかでもよく誤解されがちなのが「クリーニング」の役割です。
「なんとなくサッパリするためにやるもの」と思われることも多いですが、歯石を除去するクリーニングは、れっきとした“歯周病の治療”です。
特に歯石の中や周囲には細菌がびっしり潜んでおり、それを除去することが、炎症のコントロールや進行予防に直結します。
つまり、ただの“お掃除”ではなく、見た目以上に大事な医療処置なのです。
■「痛くなってから」では間に合わないことも
歯周病は“静かに進む病気”であり、“静かに歯を失う病気”です。
痛みが出るころには、すでに歯ぐきの中ではかなり進行してしまっていることがほとんどです。
だからこそ、「今はとくに困っていない」という方こそ、定期健診に来ていただきたいのです。
健診では、歯周病の進行状況を数値で見える化し、
必要であればその場でケアや指導、治療プランの提案を行います。
放っておけば抜くしかなくなってしまう歯も、早めの一歩で守れる可能性がある。
そのための場所が、歯科医院の定期健診なのです。
■まとめ:歯ぐきの違和感は、「静かなSOS」かもしれません
歯周病は、放っておいても自然に治る病気ではありません。
でも、気づいて、対策すれば守れる病気です。
「なんとなく歯ぐきが腫れてる」「最近、歯みがきのときに血が出る」
そんな小さな違和感を感じたら、ぜひ一度チェックを受けてみてください。
そして、「何も問題がなかった」というときでも、それを確認しに来ることが、歯を守る第一歩です。