歯ぎしりってただの癖じゃない?──実は“歯が壊れる音なき爆弾”かもしれません。
朝起きたときに、なんとなくあごが疲れている。
前歯がすり減ってきた気がする。
家族に「寝てるとき歯ぎしりしてたよ」と言われたことがある。
そんなあなた、もしかすると“無意識のうちに歯を壊している”かもしれません。
「歯ぎしり」や「食いしばり」は、実は歯科で非常に多い相談のひとつ。
しかも、自分では気づかないまま進行することが多いため、放っておくとさまざまなトラブルの原因になります。
今回は、その“音のしない爆弾”ともいえる歯ぎしりの正体と、気づいたときの対策についてお話しします。

■歯ぎしりは、「歯をギリギリ鳴らすこと」だけじゃない
まず前提として、「歯ぎしり=ギリギリ音がする動き」だけではありません。
歯科では、以下の3つを総称して「ブラキシズム」と呼びます:
- グラインディング(上下の歯をすり合わせる:典型的な歯ぎしり)
- クレンチング(歯を強く食いしばる:音はしないが強い力が加わる)
- タッピング(カチカチと上下の歯を小刻みに噛み合わせる)
これらは睡眠中や無意識のときに起きるため、本人は気づいていないことがほとんどです。
■歯ぎしりが引き起こすトラブルとは?
「ただの癖でしょ」と思われがちな歯ぎしりですが、実は歯や周囲の組織にかなりのダメージを与えます。
- 歯がすり減る・欠ける
- 詰め物やかぶせ物が割れる・外れる
- 噛むと痛い・しみる(咬合性外傷)
- あごの関節に負担がかかる(顎関節症)
- 肩こり・頭痛の原因になることも
- 歯周病を悪化させる要因にも
つまり、歯ぎしりは放置すると“複数の問題”を静かに引き起こす可能性があるのです。
■原因は? ストレス・習慣・噛み合わせ…
では、なぜ歯ぎしりが起こるのでしょうか?
明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、以下のような要素が関係していると考えられています。
- ストレス・緊張(就寝中の食いしばりに特に関係)
- 日中の姿勢や癖(無意識の力み)
- 噛み合わせの不調和
- 睡眠の質や呼吸状態の乱れ
現代人は特にストレスの多い環境にあるため、軽度の歯ぎしりをしている人は実はとても多いとされています。
■「歯がすり減ってきた…」それ、サインかもしれません
歯ぎしりに気づくきっかけはさまざまですが、以下のような変化があると要注意です。
- 前歯や奥歯の角が丸くなっている
- 詰め物やかぶせ物がよく外れる
- 冷たいものがしみる(知覚過敏)
- あごに疲れや違和感がある
- 目が覚めたときに噛みしめていた記憶がある
- 「歯ぎしりしてたよ」と言われたことがある
どれかひとつでも当てはまる場合は、歯科でのチェックをおすすめします。
■対策の代表例は「ナイトガード」
歯ぎしり・食いしばりの対策として、よく使われるのが**「ナイトガード」**というマウスピースです。
これは:
- 就寝中に装着することで、歯と歯の接触を防ぐ
- 力の分散によって歯や詰め物を守る
- 顎関節や筋肉の緊張をやわらげる
といった役割があります。
保険適用で作成できることが多く、軽度でも装着することでトラブルの予防につながるケースは多いです。
また、必要に応じて噛み合わせのチェックや、生活習慣の見直しなどを合わせて行うこともあります。

■まとめ:「なんとなくの違和感」は、静かなサインかも
歯ぎしり・食いしばりは、本人が気づきにくい上に、じわじわと歯を壊すリスクの高い癖です。
「寝てる間のことだから仕方ない」
「痛くないから大丈夫」
と思っていても、ある日突然、歯が欠けたり、詰め物が外れて気づくことが多いのです。
だからこそ、
定期健診のときに歯ぎしりの兆候をチェックしておくことが、とても大切です。
小さなサインを見逃さず、必要ならマウスピースなどで早めに対策を。
それが、大切な歯を守る一歩になります。