銀歯と白い歯、どっちがいいの?──見た目以上に大切な“再治療のリスク”の話
歯の治療をする際に、こんなふうに言われたことはありませんか?
「保険でできる銀歯にしますか?
それとも、白い歯(セラミック)にしますか?」
初めてだと、戸惑いますよね。
「見た目の違いくらいじゃないの?」「保険がきくなら銀歯でいいかな」
そう思うのはごく自然なことです。
でも実は、この選択には歯の未来を左右する“大きな違い”があります。
今回は、治療後の歯を“できるだけ長く守る”という視点から、素材選びについてお話しします。
■銀歯はなぜ再発しやすいのか?
銀歯(保険診療で使われる金銀パラジウム合金)は、長年使われてきた実績がある素材です。
治療費も抑えられ、硬さもあり、今でも多くの歯科医院で使われています。
ですが、二次虫歯のリスクが高いという大きな欠点があります。
- 接着剤が劣化して、歯と銀歯の間にすき間ができる
- 素材が硬すぎて、反対の歯を傷めることもある
- 表面に汚れが付きやすく、プラークがたまりやすい
- 微細な段差ができやすく、ケアがしにくい
これらの要因が重なり、一度治した場所がまた虫歯になる=二次虫歯になりやすいのです。
しかも、銀歯の下で虫歯が進行していても、表からは見えにくいため発見が遅れることも少なくありません。
■セラミックは“ただ白いだけ”ではありません
一方、近年選ばれることが増えているのが、セラミック素材です。
「見た目がきれいだから」というイメージが強いかもしれませんが、それ以上に大切なのは、再治療を防ぐための構造的な強さです。
- 歯としっかり接着できる(すき間ができにくい)
- 表面がつるつるで汚れが付きにくい
- 金属を使わないので、アレルギーや歯ぐきの黒ずみの心配がない
- 噛み合わせに配慮した素材設計ができる
これにより、二次虫歯のリスクが大きく減ると考えられています。
実際、治療後のメンテナンスをきちんと行えば、10年以上問題なく使えるケースも多数あります。
■一度きりの治療にしたいからこその素材選び
歯は一度削ると元には戻りません。
治療を繰り返せば、そのたびに歯の寿命は縮んでいきます。
だからこそ、「その治療を最後の治療にしたい」という考え方がとても大切です。
そのために、再治療になりにくい素材を選ぶというのは、見た目よりもずっと重要な判断軸になるのです。
「白くてきれいだからセラミック」ではなく、
「歯を守るためにセラミックを選ぶ」
——これが、いま多くの方が“白い素材”を選び始めている理由です。
■ただし、素材だけで決まるものではない
ここで大切な補足をひとつ。
銀歯だから絶対に虫歯になるわけでも、セラミックだから絶対に虫歯にならないわけでもありません。
日々の歯みがきやフロスなどのセルフケア、そして定期的なメンテナンスがあってこそ、素材の力が活きてきます。
実際、銀歯でも長期間トラブルなく使い続けている方もいれば、
セラミックにしたのに磨き残しが多くて再治療になってしまった、という方もいます。
つまり、素材の違いは「確率の問題」なのです。
リスクを下げやすい素材を選ぶことと、それを維持する習慣の両方があって、はじめて歯は長く守られていきます。
■まとめ:見た目の話ではなく、「歯の寿命」の話
治療の素材選びは、単なる“見た目の問題”ではありません。
それは、10年後、20年後に自分の歯がどれだけ残っているかという、将来の話です。
あなたの歯の健康を守る選択肢のひとつとして、セラミックという素材があることを、ぜひ知っておいてください。